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 萎えたペニスをジーンズに収めたテッドが、ユリアンに話し掛ける。
「へへっ、見たかい? 兄ちゃんの顔。俺のザーメン浴びて、嬉しそうにしてんだろ」
「もう……わかった」
 ユリアンがぽつりと呟く。デッドマンはちらりとユリアンを一瞥した。
 テッドが笑いながら、ユリアンと話を続けた。
「何がわかったんだ?」
「事故か何かで両腕を失ったジュリィは……あんたたちの慰み者になることでしか、うちに仕送りができなかった……だから、プライドを捨ててオモチャになってるんだ……僕たちの……ために……」
 ジュリアスはその言葉を聞いて、自分に降り注ぐ暖かい光を感じた。
 こんな無様な姿を見ても、ユリアンはまだ自分を信じてくれている。軽蔑し、嘲笑してしまえば楽になれるものを、それを拒否している。
 しかし、そうすることがデッドマンの怒りを買っていることに、ジュリアスは気づいてもいた。
 ユリアンが一言、こんな人は兄じゃない、僕の知っている兄はもういないと言えば、デッドマンは手を叩いて喜び、ユリアンを解放するだろう……。
 俺を軽蔑してくれ……ジュリアスはそう願った。それだけが、ユリアンが助かる唯一の道なのだ……しかし、ユリアンは真っ直ぐな目でジュリアスを見つめ、はっきりと言い放った。
「兄さん……僕は兄さんを尊敬する。兄さんが何をしても、どんな扱いを受けても」
「ユリアン……」
 ジュリアスは思わず、弟の顔を見上げた。澄んだターコイズブルーの瞳が、慈しみの色を放って、ジュリアスを見つめていた。
 子供の頃から、優しい弟だった。兄であるジュリアスを尊敬してもいた。
 自分がいない間、よく家族を守ってくれたと……立派になったなと……言ってやりたいことは山ほどあった。
 しかし、それは到底叶わぬ望みだった。ジュリアスは黙って目を伏せ、ユリアンから視線を逸らした。
「こいつはそんな偉い奴じゃねえ」
 不意にデッドマンが口を挟んだ。
 そして精液にまみれて床に倒れているジュリアスを強引に起こし、膝立ちにさせた。
「本当のことを教えてやる。ジュリアスは俺たちの参謀だ。犯罪計画を立てて、大金を得てるのさ。列車強盗、駅馬車強盗、銀行強盗……どれだけ罪を重ねたか、わかりゃしねえ。そうやってこいつは、その分け前を得ている」
「本当なの? ジュリィ……」
「ああ……本当だ」
 ユリアンの問いに、ジュリアスは首を縦を振って答えた。
「フフッ、だからつまり、どういうことかというと……」
 デッドマンがジュリアスの顎の下に手を差し入れ、乱暴に上を向かせる。
「こいつは好きで、こういうことをやっているんだ。金とは関係なく、な」
「ううっ……」
「わかってるだろうな、ジュリアス?」
 顎をグッとつかんでデッドマンはジュリアスの目を覗き込んだ。そして空いているほうの手でボタンを外し、男根を出す。
 直後、ジュリアスの顔に生温かい飛沫がジョボジョボと降りかかった。
「くっ……う、ううっ」
 正面から滴り落ちてくる臭い小便。避けることは簡単だった。しかし今、自分がしなければならないことを考え、ジュリアスは意を決して、その口を大きく開いた。
 湯気の立った液体が、開いた口に注がれる。舌に当たって泡を立てながら、小便は喉の奥へ流れ込んでいった。ジュリアスは喉を鳴らし、ゴクゴクとそれを飲み干していく。
「ハハハッ、小便は美味いか? まるで便器だな」
「あ、あぐぁっ……う、あがぁっ……」
臭気が嗅覚を嬲り、嘔吐感が込み上げてくる。それでもジュリアスは眉間に皺を寄せ、その屈辱に耐えた。
 ユリアンが自分を見捨てるまでの辛抱だ。そう自分に言い聞かせる。
「全部飲みきらねえで、口の中に残せ。できるだろう? いつもやってることだからな」
 上からそう命じられ、ジュリアスは言うとおりにした。口内に汚物を溜めたまま、上を向いてじっとしている。
「いつもやってるみたいにしろ。口の中を漱いでから飲み込め」
「う、う……くちゅっ……くちゅ、くちゅ……う、う……」
 ジュリアスの口が命令を受け入れ、動く。チャプチャプと液体の音を響かせて、口の中で小便をシェイクした。
 歯と歯茎、そして上顎も頬の裏も舌も、すべて生臭い小水にまみれ、汚れていく。
 デッドマンの許しが出ない限り、この行為は続けなければならなかった。彼が満足した後は、それを飲み込む必要があった。
「フフッ、もういいだろう。きちんと味わって飲めよ」
「うぅ……ん、ごくっ、お、おえっ……ごくん……」
 最後の一滴を嚥下した時、ジュリアスは激しく咳き込んだ。弾みで胃の中のものをすべて吐き出してしまいそうになり、歯を食いしばる。喉から出かかった血が口の中で、たった今飲まされたものと混じり合う。
「ゴホッ……う、んぐ……っ、コッ、コホ……」
 ジュリアスが必死で咳を堪えていると、不意にユリアンが声を上げた。
「や、やめろっ!」
 慌ててその方向を見ると、スコットがユリアンの股間を撫で回しているところだった。
 驚いてジュリアスは叫んだ。
「やめっ……触るなっ! ユリアンにだけは……!」
「さて、そろそろ弟の方のケツを頂くとするか。兄貴がヨガるのを見て、興味も湧いてきたろうぜ」
 デッドマンが上からジュリアスに囁きかけた。蒼白となったジュリアスの顔を見下ろし、意味ありげに笑っている。
 ジュリアスは真剣な表情で、デッドマンに訴えた。
「やめてくれっ!」
「俺の勝手だと言ったはずだ」
「お願いだから、もうこんなこと……何でもする! 俺が、どんなことでもするから……ユリアンには手を出さないでくれ……」
 ジュリアスは、額を床に擦りつけた。
 デッドマンは口角を上げて、自らの勃起を右手でしごき上げた。
「それじゃあ、俺のコレはどこに入れたらいいんだ? ジュリアス?」
「俺に……俺にしてくれ……」
「そういう態度じゃ、入れてやる気にはならねえな」
「お、お願いします……俺のケツ穴に、それを……入れてください……」
 ジュリアスはデッドマンの足元に顔を沈めて、何度も哀願した。
「お願いします……お願いしますお願いしますっ! お願いします……お願いします……入れて……俺に、チンポを入れて……ください……お願い……します……お願い……」
「フッ、そこまでおねだりされちゃあ、仕方ねえな」
 デッドマンはジュリアスの頭を掴んで、体の向きを変えさせた。ユリアンが座っている椅子が正面になるように、床に這わせる。
「だらしなくヨガる顔を弟に見せろ。バカみたいになってる顔をな」
「はい……」
 ジュリアスは素直に頷いて、艶めかしく尻を突き出した。
 ユリアンがじっと自分を見つめていることなど、百も承知である。
「ジュ、ジュリィ……」
 スコットはすでに手を離している。彼らの目的はユリアンを犯すことではなく、自分の心を完膚なきまでに踏みにじることなのだとジュリアスはわかっていた。
 弟の眼前で、ジュリアスが恥辱にまみれ、ゴミのように汚され苦悩することが、デッドマンの望みなのだ。
 尻肉を鷲づかみにされ、中心に硬いものが押し当てられる。
 少しずつ挿入されてくる暴根を飲み込みながら、ジュリアスはこの世の終わりが来ることを願った。
「ああっ……ん、んはあぁ……っ」
心でどれだけ拒んでも、肉体は勝手に反応してしまう。快感を教え込まれた痴穴が掘られる度に、ジュリアスは背筋がゾクゾクするような感覚を覚えた。
 弟の視線を感じると、身が焼かれそうな思いがした。それと同時に、下品な振る舞いを見せつけることで、ユリアンに自分を軽蔑して欲しいとジュリアスは思った。
 彼が愛した兄は、もういないのだ。ここにいるのは死に損ないの片輪でしかない。
 ジョージアへ帰り、母と妹に兄は死んだと伝えて欲しかった。
 ユリアンは立派に成長した。もう、自分が送金をする必要もない。自分の役目はすべて終わった。ユリアンを無傷でこの屋敷から外へ出すことが最後の仕事だ。
 そのためなら、どんなことでもする。そう、ジュリアスは決意していた。
「どうした、ジュリアス? もっとヨガらねえと弟のケツに乗り換えるぞ」
 デッドマンが耳元で小さく囁いた。
「わ、わかった……わかったから……ああっ! も、もっと奥まで、突いて……い、いいっ……気持ちいいッ!」
「俺のチンポが大好きなんだろう? 俺がいくまで、そう言い続けろ」
「ボ、ボスのチンポが好きです……チンポ、好き……ですっ、チンポ、チン…ポ好き……はっ、はうぅあああんっ!」
 浅ましく腰を振り、デッドマンの肉刀を体内に埋め込む。奥まで貫かれれば貫かれるほど、体の内側がすべてどす黒く塗りつぶされるような気がした。
「ジュリィ……兄さん……」
 ユリアンの声が掠れていた。怯えたように顔を強張らせて、じっと目の前の行為を凝視している。
 ジュリアスは飢えた獣のように呻き、自ら尻を突き上げた。
 敏感な粘膜を張ったカリで擦り上げられ、直腸がみっともなくめくり返される。
 その様を見下ろし、デッドマンはせせら笑った。
「フフッ、尻の穴をおっぴろげて、だらしねえな。そんなに気持ちいいか? え?」
「あうっ……は、はい……気持ち……いい、です……っ!」
「これからも俺のために尽くしたいだろう? 頭でも、体でも」
「はあっ……ああ、あっ、は、はいっ……尽くしたい……です……」
「フン、優しくしてやらなくても、そういうことが言えるじゃねえか。よっぽど、こうやって乱暴にぶち込まれるのが好きなんだな……ハハハハハッ!」
「ううっ……ぐ、ぐうぅ……」
 ジュリアスは悔しさに唇をギリギリと噛み締めた。
 自分をどん底まで貶めて、デッドマンが歓んでいる。この愉悦のために、彼はわざわざ芝居までしたのである。
 ジュリアスに夢と期待を持たせて、すべてを剥ぎ取り、地獄に突き落とす。愛を与えておいて、踏みにじる。そうすることが、よりジュリアスにダメージを与えることを、デッドマンは知っていたのだ。
 熱い口づけ。癒しの愛撫。温かい抱擁。それを信じた自分が迂闊だったのだと、ジュリアスは悔恨の情に苛まれていた。
「まさか、本気で俺に愛されてると思ってたとはな。そんなに嬉しかったのか? え?」
「……ううっ……」
 デッドマンは両手でジュリアスの腰を抱え、激しく前後に揺さぶった。太い剛直が根元まですぼまりに沈み、凶暴に内臓をえぐる。
 息が詰まりそうな圧迫感に、ジュリアスは何度も息を吐いた。いつもにも増してデッドマンが興奮しているのは、肉棒の大きさと硬さでよくわかった。
 敏感な粘膜を容赦なく摩擦されて、ジュリアスは思わず喘いだ。感じまいとすればするほど、甘い疼きが下半身から立ち上ってくる。
「ああ……ぁ、あふ……うっ、ああん……はあっ、はああっ……ひゃうぁ……」
 気がつけば、ジュリアスの股間も勃起していた。弟が見ている前で尻穴を犯されているというのに、どうしても治めることができなかった。
 

Violated Mind-05へ続く(全6頁)