「ジュリィ……会いたかったよ! ユリアンだよ、ジュリィッ!」
ユリアンはデッドマンの横をすり抜け、ジュリアスが横たわるベッドに駆け寄った。
「ユリアン…まさか……」
「ジュリィ……こんなに痩せて……可哀想に……」
「俺を……迎えに来たのか……?」
「えっ? 家に帰れるのっ? そうできるならそうしようよ! もう何も心配いらないよ……僕がいるもの。今までジュリィに迷惑かけた分、僕が恩返しするから。ジュリィはお医者に……そうだ、子供の頃、風邪をひいた時に行った病院がね……アトランタでまた開業してるんだ。先生はもう、おじいちゃんだけど……ジュリィのこともちゃんと覚えているよ。こないだ、エミリーを連れて行った時、ジュリィの話をしてたんだよ。ジュリィの弾くオルガンの音色は最高だった、って!」
嬉しそうにまくし立てるユリアンの肩越しに、ジュリアスはデッドマンの顔を見た。
状況がはっきりと掴めなかった。ジュリアスの頭の中で、様々な考えが錯綜していた。
家族の許に帰れるのか? 一瞬、そう思った。が、そんなことがあるはずがないという思いの方が勝っていた。それでもジュリアスは、僅かに胸に灯った期待を完全に打ち消すことはできなかった。
そのジュリアスの混乱を収束させたのは、デッドマンの一言だった。
「そろそろいいだろう。スコット、テッド」
デッドマンが顎で合図すると、突然、スコットとテッドがユリアンの体を左右から羽交い絞めにした。
「えっ? な、何を……」
「やめろっ!」
咄嗟に叫んだジュリアスの、その表情を……嬉しそうに見つめる目があった。デッドマンである。
その目を見た瞬間、ジュリアスは恐ろしい予感に胸が潰れた。急激に全身の血が沸騰するような心地がした。慌てて上体を起こし、デッドマンを睨みつける。
「やめろ! 弟に手を出すな!」
「ジュ、ジュリィ……」
ユリアンはスコットとテッドよって椅子に座らされ、ロープでぐるぐると拘束された。片腕ずつ肘掛けに、そして片足ずつ椅子の脚に括りつけられていく。
「やめろと言って……」
そうジュリアスが叫んだ時、デッドマンがジュリアスの黒いガウンを剥ぎ取った。
「……!」
驚愕したユリアンの双眸が、ジュリアスの上半身に向けられていた。
透けるように白い肌は昔のままだったが、その色を醜い傷痕が埋め尽くしている。そして体の両側には、人間として当然あって然るべき両腕がなかった。
「ジュ…ジュリ…ィ……腕が……」
「……」
ユリアンの震える声を、ジュリアスは悲痛な面持ちで聞いていた。弟の前で、一部が欠損した裸体を晒すなど、今まで考えたことさえなかった。
一生、ジョージアに戻るつもりはなかったし、家族と言葉を交わすこともないと思っていた。ただでさえ、自分はもう永くない。自分が死んだら遺体はどこかへ捨てて、実家には死の事実のみ伝えて欲しいとスチュアートに頼んだ。
ジュリアスはその時を待ち望んでいた。苦しみから解放される、その時を。
そんなジュリアスの耳元で、デッドマンが囁いた。
「フフ、もういつでもくたばっていいぜ、ジュリアス。お前の代わりが来てくれたからな」
「な…っ! そんなこと、絶対に許さない! 俺はまだ……死なない!」
「弟は銃も撃ったことがないようだ。それじゃ腕を切る必要はねえな……両脚を切るか」
「やめてくれっ! このまま……実家へ帰してやってくれ! 俺がまだちゃんと働く!」
「さて、どうしようか」
デッドマンはガウンをベッドの上に放り投げると、ジュリアスの髪を鷲づかみにした。そのまま力ずくでベッドから引きずり下ろす。
「ぐぁっ!」
「ジュリィっ!」
全裸で両脚を折り畳まれたジュリアスが、床の上に転げ落ちた。
あらかじめ脚を縛られていた理由がようやくわかった。反撃の手段を奪うためだ。ジュリアスは床に這いつくばって、デッドマンを見上げた。
「ボス、お願いだから……何でもするから……」
「フン、家畜の分際で、何を甘えた声出してやがる。身の程をわきまえろ」
「ボス……」
「まさか、俺に愛されてるとでも思ってるのか?」
「……そ、そんな……」
ジュリアスは頭から冷水を浴びせられたような心地になった。
あのキスも、優しさも、労わりも……何もかもデッドマンの芝居だったのだと気づくまで、それほど時間はかからなかった。すべては今日、この瞬間のための計画だったのである。
「くそっ……」
ジュリアスの青い瞳に、消えていた憎悪の念が浮かび上がった。
デッドマンはスコットたちに耳打ちをすると、彼らと交代にユリアンの傍らに立った。そして低い声で囁きかける。
「兄さんが、どうやって金を稼いでるのか、よく見るんだな」
「こ、これはどういうことなんですか……どうして兄は腕がなくなってるんですか? どうして病気なのに、あんなふうに縛られて…」
半狂乱になってユリアンは頭を振った。恐ろしさに身震いしている。その肩にぽんと手を置いて、デッドマンは笑った。
「奴は、金鉱でなんか一度だって働いちゃいねえ。どういうことか、まあ見てるがいいぜ」
デッドマンとユリアンの視線の先では、スコットとテッドがしゃがみ込んで、床に転がったジュリアスの髪を掴み、強引に上向かせているところだった。
「ハハハッ、身内の前で無様だなァ」
「兄貴の面目丸つぶれだね、こりゃ」
言いながら、ジーンズの前ボタンを外す。猛り狂った二本の男根が、並んでジュリアスの眼前に突き立てられた。
「おら、しゃぶれよ」
「うまくやれば、弟は許してもらえるかもよ?」
ジュリアスは唇を噛み締めた。どの道、自分に選択権はない。
「んぷぁ……」
口を開け、ジュリアスは自分から雄身にしゃぶりついた。二本の肉竿を交互に、それぞれ満遍なく舌で舐め回す。
床に尻をついて座る二人の男の股間に、たった一人の兄が顔を埋めた。ユリアンは目の前が真っ暗になった。
「ジュリィ……やめて、そんな……汚い……!」
「……ちゅっ、むちゅっ……ぺろ、れろん……あぁ……ちゅむるっ……」
「ジュリィっ! そんなことやめてよ! ジュリィってば!」
弟の声が耳に刺さる。しかし、やめることはできなかった。
自分が今、できることは……誠意を見せることだけだ。命令どおり素直に行動すれば、ユリアンを解放してもらえるかもしれない。もちろん、そうでないかもしれなかったが……何もしないよりは、した方がデッドマンの機嫌を取れる。そうジュリアスは判断したのだ。
「おおっ……すげぇ、気持ちいい〜〜っ」
「腰が蕩けそうだぜ……」
口々に感嘆の言葉を口にしつつ、スコットとテッドは肉棒の根元を握って、ジュリアスの顔の前で振りたてた。亀頭を追いかけて舌を伸ばすジュリアスの顔を見て、嘲り笑う。
「んじゅるっ、ちゅぱっ……んぁ、あがっ……あ、む……ん、あはぁっ……」
二人は鈴口から滲み出した汁をジュリアスの頬になすりつけたり、口の中に交互に頬張らせたりして、ジュリアスの口を弄んだ。
ジュリアスはじっと耐えたまま、唇と舌を使い続けていた。
「ジュリィ……」
ユリアンががっくりと項垂れ、顔を背けた。両肩が小刻みに震えている。
「フフッ、どうしたユリアン? しっかり見てやれ」
話しかけるデッドマンに、ユリアンは黙って首を振った。
「あんなこと……無理やりやらされて……」
「無理やりでもなかっただろう。見てなかったのか。あいつは自分からチンポをくわえたんだぜ?」
「でも……違う。あの気高い兄が、あんなふうに堕ちるわけがない。理由があるんだ……きっと……」
ユリアンの言葉を聞いて、デッドマンはチッと舌打ちした。そして、
「スコット、ケツ穴にハメてやれ。こいつにねだらせるんだ」
と、指示を与えた。
スコットは言われたとおりに、ジュリアスの下肢に回った。裸の尻を手で持ち上げ、焦らすように陰嚢や会陰に切っ先を押し当てる。
デッドマンがゆっくりとジュリアスに歩み寄り、背中を靴で踏みつけた。
「んぐぅっ……」
「ジュリアス……どうすればいいか、わかってるな? ちゃんとやらねえと……」
「うぅ……わ、わかってる……」
ジュリアスはスコットに尻を突き出した。
口の中には、テッドのペニスを根元まで詰め込まれる。ペロペロと舌を動かして肉塊をねぶるジュリアスの体内に、ぶっすりと剛直が突き刺さっていく。
「あっ……あはぁっ……!」
ジュリアスは、頬を赤く染めて腰をくねらせた。
ユリアンは目に涙を溜めながら、兄の痴態をじっと見つめていた。
上と下の口を同時に犯され、ジュリアスは吐き気を催した。
弟の前で肛門性交させられている自分が、ひどく惨めに思えた。
ユリアンが椅子に縛られてから、一度も彼の顔を見ていない。とても見ることができなかった。
ジョージアの家を出た時のことを思い出す。まだ小さかった弟と妹が、右手と左手にぶら下がって、駅まで着いていくといって聞かなかった。
『ジュリィおにいちゃん、クリスマスには帰ってくるんでしょ?』
『だめだよエミリー。ジュリィは遊びに行くんじゃないんだからっ』
『でもでも、せんそうじゃないんでしょ。だったら、行ったままにならないよね』
『ああ。毎年とは言わないが……何年かに一度はちゃんと帰ってくる。クリスマスかもしれないし、父さんの命日かもしれない。ユリアンやエミリーの誕生日かもしれないな』
『ホント? ジュリィ! 約束だよ!』
『やくそくよ、おにいちゃん!』
喉の奥に、亀頭が激しくぶつけられる。頭を両手で押さえ込まれて、激しく前後に振られた。唇の輪をカリの部分が通過する度に、赤黒い肉柱がビクビクと脈動した。
「お、おごっ……ぉ、あっ、あがぁ……ずちゅっ! ずじゅぼぼぼっ!」
淫らな音を立てて、肉棒が口を出入りしている。
やがて、強張りが口から引き抜かれ、尿道口から勢いよく白濁液が噴出した。それをすべて顔で受け止めて、ジュリアスは大きく息をついた。
「なんだ、もうイッちまったのか」
笑いながらデッドマンはジュリアスの髪を掴み、精液にまみれた顔をユリアンに向けた。ジュリアスはきつく目を閉じ、歯を食いしばっていた。
続けて、腰を使っていたスコットにも限界が訪れた。ジュリアスの尻を抱え、激しく腰をグラインドさせる。腸壁を乱暴に擦り立てられて、ジュリアスは喘いだ。
「あっ……あ、あはあぁっ……んっ、くはああああっ!!」
スコットが声を上げて、ジュリアスの肛門に欲情の迸りを注ぎ込んだのは、それから間もなくだった。熱い体液が腸の奥まで届いて、やがて逆流する。
スコットがペニスを抜くと、ジュリアスの後孔からドボドボと粘ついた液体が零れ落ちた。
ユリアンは黙ったまま、そんな兄の姿から目を離さなかった。
Violated Mind-04へ続く(全6頁)
|