銃を選べば、そのまま撃ち殺されるのだろう。それは確かにジュリアスが、ずっと望んでいた結末だった。両腕を失ってからというもの、常にどうやって死ぬかということばかり考えていた。
そして銃を選ばないという道。それは服従を意味する。家畜として飼われ、玩弄されながら屈辱の日々を送ることになる。正に、生き地獄だ。
生か死か。ジュリアスはふた呼吸の間、迷った。
そしてジュリアスは……目をきつく閉じ、自らが選んだ方にしゃぶりついた。
「ハッハッハッ。チンポを選びやがった。こっちが大事か。エロギツネめ!」
デッドマンは高らかに哄笑した。拳銃をホルスターに収め、ジュリアスの口の中にペニスを押し込む。それをジュリアスは、夢中でしゃぶり尽くした。喉の奥に巨大な亀頭が届き、嘔吐感を煽る。
デッドマンの手が、ジュリアスの股間をまさぐった。若々しいペニスはすぐに屹立し、先端から透明の汁をあふれさせる。無造作にそれを握り、扱き上げると、すぐにジュリアスの舌の動きが激しくなった。亀頭をぺろぺろと舐め回し、裏すじにも舌を這わせる。淫らな眺めだった。
デッドマンはジュリアスの顎を掴み、彼の口からペニスを抜いた。
「はっきり言ってみろ。死にたくない、とな。家畜として、そばに置いてくれと」
唾液とねばついた透明な汁を唇にまとわり付かせたまま、ジュリアスはデッドマンを見上げた。
「死にたくない……。俺は……」
「生き延びてみせる、か?」
「……家畜でも、何でもいい。俺は、お前に復讐するまでは、生き続ける」
「復讐か。ハッハッハッ、いいだろう。せいぜい頑張るんだな」
そう言うとデッドマンは、尖ったブーツの先でジュリアスの胸を蹴った。そのまま床に倒れたジュリアスにのしかかり、右手で尻肉を割り開く。そして、そこに位置する蕾を指でなぞり、ねっとりと揉みほぐした。
「あふう……」
ジュリアスが震え、身悶えた。デッドマンは冷笑した。
「いくら凄んでみせても、体がこうじゃな」
「く、くうぅっ……」
「いつもながら素直な体だ。惚れ惚れするぜ」
デッドマンの言う通りだった。
目の前にいる相手を憎み、復讐を誓う気持ちとは裏腹に、肉体はどんどん服従させられて行く。デッドマンの指と男根に慣らされ、即座に反応するこの肉体を、ジュリアスは憎いと思った。
悔しさに唇を噛み締める回数が増えるほど性感は増幅し、拒もうと思えば思うほど、官能の火柱が肉体を灼く。
その矛盾を怨みながらも彼には、一度火の付いた肉体を自分で慰めることはできないのだった。ジュリアスは快楽を求める肉人形となって、尻を振り、デッドマンに媚びる意外に、何も手段を持ち得なかったのである。
デッドマンは、強引にジュリアスの体をひっくり返した。さんざん犯され、欲望を注ぎ込まれた淫穴がそこにある。
「何度ぶち込まれたか知らねえが、ずいぶん派手にやられたようだな」
両手でジュリアスの尻を掴み、二本の親指で肛門に触れる。輪のように盛り上がった肛門の淵。ピンク色の直腸がむき出しになっていた。デッドマンはゆっくりと、そこに親指を埋め込んだ。
「はあァ…っ、はぁ……あっ」
ジュリアスは甘い声で喘いだ。尻を鷲掴みにされたまま、二本の親指が侵入してくる。そのまま左右に括約筋を引っ張られ、緩まったアヌスが無惨に広げられた。ぽっかりと開いた穴が、デッドマンの前に晒されている。
「あああ……、……もう……」
「自分で差し込んでみろ」
デッドマンは肉刀の先端で菊門を突ついた。熱く硬い感触に、思わずジュリアスが身をよじる。それを見て、デッドマンは意地悪く腰を引いた。
「ああっ! ボ、ボス……、早…く……」
焦らされて、ジュリアスは激しく頭を振った。
腰を回すように動かしながら、ペニスを捜す。デッドマンの一物を追って、ジュリアスの白い尻がくねくねとうごめいた。
「ボス……、ボスッ、ああ……」
「そのまま来い。すぐにくわえ込めるぜ」
デッドマンは、男根をアヌスにあてがった。粘膜に亀頭が触れる。ジュリアスは我慢できずに、一気に尻を後ろに突き出した。
「あああああッ!」
爆発的に体を貫く快感。ずっぽりと亀頭が彼のアヌスに収まった。
「どうした? これだけでいいのか」
「い、やだ……もっと……」
「しっかり動け。楽するんじゃねえ」
「……っ、は…あ、あ…」
ジュリアスは、バランスを取るのが精一杯だった。体を支える腕がないため、上半身が前に倒れてしまう。体が前屈みになれば、肉棒がずるりと抜ける。再び腰を動かして挿入するには、不安定な姿勢になるしかなかった。
「はあ…はあ…はあっ…」
何度もジュリアスは上体を起こし、後ろにある出っ張りに腰を沈めた。その都度、膨張したペニスが括約筋をくぐり、強烈な快美感を彼にもたらした。
しかし結合したままジュリアスが動こうとすると、デッドマンはわざと腰を引き、同時にその背中を押して、床に転がすのだった。
「クックック。たまんねえだろうが」
「ううっ……」
四つん這いになれないもどかしさが、ジュリアスを翻弄する。四肢の半分を欠損している彼は、他者の手を借りなければ恍惚を貪ることさえできない。悔しさに歯がみしても、欲望は簡単には治まらなかった。
彼の脈打つ陰茎は、はち切れそうになって先端から涎を垂れ流していた。包皮がめくれ上がり、赤黒い亀頭が艶やかに輝いている。体の中で燃え上がる肉欲。射精の欲求がジュリアスを責め苛む。もう、そのままの状態でいることには耐えられなかった。
とうとうジュリアスは、プライドを捨ててデッドマンに泣きついた。
「ボス……。お願い……い、入れて、掻き回して……」
「俺に命令するのか? そこまで身の程知らずでもあるまい」
「もう……もうっ、気が…狂いそう……で……」
「狂え。俺は構わん」
「ボ、ボス……」
ジュリアスは俯いた。しかしすぐに彼は尻を高々と突き上げ、くねらせ、しなを作って哀願した。気位の高いジュリアスの牙城が崩された瞬間だった。
「……やって……ください…。お願い……です……」
「フン、浅ましいキツネだ」
デッドマンは吐き捨てるように言うと、ジュリアスの腰を両手でがっちりと抱え、反り返った雄身を強引に突き刺した。
「アハアアァーッ!」
ジュリアスが狂喜の声を張り上げた。獣のような声だった。
根元まで深々と嵌め込まれた巨根が、中で更に大きくなるような感触。デッドマンは恐ろしいほどの荒々しさで、ジュリアスを貫いた。
「ボスッ! いいっ! イイッ! もっと…もっとーッ!」
ジュリアスのアヌスが強烈に収縮する。直腸の粘膜はしっかりと肉槍を包み、まとわり付き、締め上げた。括約筋がひくひくと動いて、雁首に刺激を与える。
ジュリアスを突き上げるデッドマンの速度が上がった。奥まで差し込み、入り口まで抜き、再び差し込むことを幾度も繰り返す。熱い肉塊が外に引き出されるたびに、内側の粘膜が粘りつくように、めくり返される。まるで、そこだけが別の生き物のようだった。
不意に、デッドマンが腰の位置を上げ、挿入されているペニスの角度を変えた。
「このへんがイイんだったな」
そしてジュリアスの腹に近い側の腸壁に、先端を強く押し当てた。
「はああっ!」
ジュリアスの全身を、痺れるような快感が襲った。
その部分を嬲られると、頭が真っ白になる。そのことに気付いたのはいつだったろうか。ジュリアスは喘ぎ声とともに息を吐き出した。
「あーっ、あーっ」
腹の中が燃えるように熱い。ジュリアスは、そこを重点的に責められることを好んだ。 デッドマンはその部分から奥に向かって、幾度もえぐるように擦り上げた。直腸がぎりぎりと雄身を締め付け、吸い込むようにうごめく。その感触を楽しむように、更に強く腰を打ち付ける。
「ひはああっ! あうああっ、ボ…ボス…いいっ! あはあッ!」
ジュリアスは、髪を振り乱して泣き叫んだ。呂律が回っていない。気がふれてしまったかのような形相だった。
全身を快楽に震わせるジュリアスの肉棒から、透明な液体が滲み始めた。それはとめどなく溢れ、糸を引いて床に伸びた。
「ああっ…ああああっ、いいっ…気持ち……イイ……」
そして、続けて白濁液が、小便のようにドボトボと床に流れ落ちた。勢いのある射精ではなかった。しかしジュリアスは惚けたように口を開けたまま、悦楽に身を任せていた。
デッドマンの抽送はまだ続いていた。逞しく張った雁首が、敏感な箇所を責め続けていた。射精を終えたというのに、ジュリアスの性感は萎えなかった。むしろ、官能の蜜穴はますます男根を締め付け、吸い込み、熱い迸りを迎え入れようと収縮していた。
「ひいいい……はあああ……」
手で扱かれることのないまま、ジュリアスに二度目の絶頂が訪れていた。ペニスは柔らかいままだったが、尿道を快楽が通り抜けた。精液は小さな排出口から溢れ出て、床に池を作る。
デッドマンは再び動きを速めた。ジュリアスの臀部を鷲掴みにして、激しく腰を打ち付ける。
「ああーっ! し…死ぬッ! 死ぬゥッ!」
ジュリアスの声に促され、デッドマンは最後の引き金を引いた。
熱い情欲のすべてが、尿道から勢いよくほとばしり、ジュリアスの腸内を満たした。背を大きく反らせ、凄まじい絶頂感に喘ぐジュリアスに覆いかぶさり、デッドマンは射精を終えた。
ジュリアスは、脱力したように床に崩れ落ちた。
事が済んだ後も、デッドマンはしばらくの間、部屋を出て行かなかった。
ベッドから離れた場所に椅子を置いて座り、愛用のレミントン・ニュー・モデル・アーミーに弾丸を込め始めた。黒色火薬が前方からシリンダーに注がれ、ローディング・レバーが鉛の弾丸を押し込む。火薬の匂いが部屋に漂う。
ベッドに横たわったジュリアスは、ぼんやりとその様子を見つめ、虚ろな表情で口を開いた。
「あんたの息子は、まだ生きているのか?」
「さあな。どこか北部の町にいるかもしれんが」
デッドマンは手を休めずに答えた。それを受けて、ジュリアスは続ける。
「歳は……?」
「聞いてどうする? 余計なことに興味持つんじゃねえ」
デッドマンはジュリアスを一瞥すると、再び拳銃に目を落とした。
ジュリアスは黙り、寝返りを打って、彼に背を向けた。
真直ぐに壁を見据えながら、ジュリアスは思った。家族に裏切られる気持ちとは、どのようなものなのだろうかと。
自分を貶めた敵に対する殺意は変わらない。が、ジュリアスの中で少しずつ、変化が起こっていた。
高潔な南部の男が、失った誇りを取り戻すためには何が必要なのか……。考えて、ジュリアスは頭を振り、己の思考を振るい落とした。
心を風が吹き抜ける。急速に、睡魔が襲ってきた。火薬の匂いの中でジュリアスは、意識を無に委ねた。
(了)
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