その時、デッドマンがスチュアートに視線を向けた。
「キャンプ・ダグラスで、看守どもの暇つぶしに歯を抜かれた奴がいた。元モーガンの部隊だったから目をつけられてな。トゥース・キーとかいう代物で無理矢理抜かれた後、数日で死んだ。炎症がひどかったらしい。不衛生だったからな、あそこは」
「大佐、あんたそれを見ていて、なぜ……」
デッドマンは答えなかった。ナイフを置き、テーブルに添って歩く。そして、ジュリアスの下半身に手を伸ばすと、ジーンズの前のボタンを外した。
「……!」
スチュアートは目を剥いた。
ジュリアスが抵抗しないのを確認すると、デッドマンは両足のロープをナイフで切り、ブーツとジーンズを一緒に脱がせた。すぐに秘部があらわになる。デッドマンはにやにやと笑いながら、スチュアートの顔を見つめた。
「ドクター。こいつを楽にしてやりたいと思わねえか」
「な…、どういう……」
「知ってるんだぜ。あんたがモルヒネを打った若い兵隊に何をしてたか」
スチュアートは戦慄した。
デッドマンはジュリアスの膝の下に腕を入れると、脚を抱え上げた。そしてスチュアートに見えるように、尻肉を左右に広げる。
「好きにしていいんだぜ。そのほうがこいつも楽になる」
「……そ、そんなことは、ここでは……」
「今さら恥ずかしがる歳でもねえだろう。よく原っぱで盛ってたじゃねえか」
菊門に指が伸びる。軽く爪が触れただけで、そこはぴくりとすぼまった。同時に、萎えていた男根が少しずつ膨張していく。暴れる体力は残っていないものの、恥部を刺激されれば反応する。その様子を見ながら、スチュアートは生唾を飲み込んだ。
「これが好きなんだろう、先生?」
呪文のように響く言葉に、スチュアートは我を忘れた。
グレッグが手を離した。スチュアートはふらふらとテーブルに歩み寄り、ジュリアスの体を手で撫でつけた。白い肌が総毛立って震えている。
「か…可哀想に」
偽善者のような言葉だと、スチュアートは自分で思った。
デッドマンはジュリアスの足を下ろし、男色家の医師にそれを預けた。そして再びジュリアスの髪を掴み、乱暴に口をこじ開けようとした。
「こ…殺せよ。た、頼むから…殺して……」
微かな声が、その口から絞り出された。ぷっくりと腫れあがった舌から血が滲んでいる。何度か舌を噛んだようだった。
「舌を噛んでも死ぬことはできないと、何度教えればわかる」
呟くように言うと、デッドマンはポケットから銀色に光るペンチを取り出した。
最後まで観賞するつもりはないらしく、グレッグとスコットが退散を決め込んだ。ドアがバタンと閉まる音が部屋に響き渡る。
その時、ジュリアスが甘い声を上げた。スチュアートがテーブルの上に乗り、彼の股間のものを愛撫していた。それを見ながらデッドマンは低く笑った。
「クックック。このキツネが素直なのは、そこだけでな。この一年間、じっくり調教してきたんだ。呆れるほど単純に言うことを聞くぜ」
彼の言葉は本当だった。やんわりと握り、僅かに包皮を上下に動かしただけで、それは見事に宙を向いてそそり立った。スチュアートは包皮を根元まで剥き上げると、先端をぺろりと舐め上げた。
「ああっ」
ジュリアスが喘いだ。
次にスチュアートは、ジュリアスの尻を指で左右に広げ、絶え間なく収縮するアヌスに舌を這わせた。唇を密着させ、皺を伸ばすように舌先でなぞり、柔らかい襞に吸い付いては舐める。敏感に反応する秘門は、生き物のようにうごめいた。
「ひっ、ひ……い、ああ、あああ……」
呻いてジュリアスは、激しく咳き込んだ。喉に溜まった血が逆流し、咳と同時に吐き出される。デッドマンは再び木桶を持ち、水の中にジュリアスの頭を突っ込んだ。口を開けさせ、喉の奥までを洗い流す。木桶の中の水は、彼の血で真っ赤に染まった。すぐに水中から頭を上げ、デッドマンは木桶を足元に置いた。
激しく肩を震わせ、深呼吸を繰り返すジュリアスの口の中に、おもむろにペンチが差し込まれた。
「や、やめ……」
言葉は一瞬で悲鳴に変わった。デッドマンはジュリアスの口を大きく開けさせ、散々痛めつけた奥歯をペンチの先で挟んだ。
「あが…ガアアアッ!」
先程の激痛と恐怖が甦ったのか、ジュリアスは足をばたつかせて暴れた。その両足を抱え込み、スチュアートは行為を続けた。
「フフフ。突っ込まなくていいのか、スチュアート。抜く瞬間はきっと締まるぜ」
「あ、ああ、そ、そうだな」
「これからも、こいつを好きにしていいんだぜ。俺たちとここで仕事をするならな」
「わ…わかった。何でもする……」
デッドマンはテーブルの下からオリーブオイルの瓶を取り、スチュアートに投げて渡した。
スチュアートはズボンと下着の前を開け、一物を取り出した。すでに先端からは大量の、ねばついた汁が溢れていた。
オイルをたっぷりと掌に出し、そのまま自らの肉茎を掴んでしごき、全体にまとわりつかせる。準備が整うと、スチュアートは無造作にジュリアスの腰を持ち上げ、肛門にペニスをあてがった。
「ああっ、ああっ、あーっ!」
めりめりと下半身が押し広げられる感触に、ジュリアスはのた打った。
太い亀頭がずるりと中に入った瞬間、スチュアートは腰を動かし、根元まで穴に押し込んだ。
「あああっ!」
ジュリアスが頭を振って悶えた。とろけるような快楽が、腰から上に立ち上ってくる。
しかし、快感は長くは続かなかった。デッドマンがペンチを左右に揺さぶり、歯を抜きにかかっていた。
「はがあっ! あ…っ、あっ、あァ、アアッ、アァーッ!!」
不愉快な振動が骨を通じて脳に伝わる。メキメキと歯が軋む音が、無遠慮に鼓膜を撫で回す。ジュリアスは背中を反らせてもがき苦しんだ。奥歯の周りから、またも鮮血が噴き上げた。
ジュリアスが絶叫するたびに、尻穴はすぼまり内部が締め付けられた。スチュアートは惚けたように、夢中でピストンを続けていた。
「頑丈な歯だな。なかなか抜けねえ」
舌打ちをして、デッドマンは片手で再びナイフを持った。ペンチで摘んだ歯を振動させながら、その根元に刃先を食い込ませる。
「ガ、ガギャアアアッ!」
「おおお……」
ジュリアスの獣のような咆哮と、スチュアートの感涙にむせぶ声は同時だった。
デッドマンはナイフをぐりぐりと回しながら、歯根を浮かせるように歯茎を切り裂いた。ぐらぐらと揺れていた歯が、少しずつペンチの力に屈して行く。
「アアアア、アッ、あ、ああ、あが…アっ、アギャ、ア、ア、あ」
次の瞬間、ずるっと歯茎から歯が抜けた。
「ガ…ア、アアアアーッ!!!」
真っ赤な血が噴出した。鮮血はジュリアスの口と鼻から流れ出し、顔中を血まみれにした。髪の生え際からじわじわと血が染み込み、濡れた金色の髪が真紅に染まる。
デッドマンはスチュアートを見た。のたうち回るジュリアスを押さえ込みながら、彼はとうに果てていた。それを嘲笑うかのように鼻を鳴らして、デッドマンは血みどろのペンチとナイフを持った手を引いた。ペンチに摘まれた歯が、ぽろりと床に落ち音を立てた。
デッドマンはジュリアスの戒めを解き、上半身を起こして血を吐かせた。木桶をテーブルに上げ、血糊と膿が浮いた水に顔を浸させた。
そしてジュリアスの髪を掴んで引きずり、横を向いて寝かせると、テーブルの淵に下半身を近づけて立った。ジーンズのボタンを外し、巨大な一物を血まみれの口に詰め込む。
「あ…ああ……」
ジュリアスは抵抗する力もなく、あんぐりと開けた口にそれを迎え入れた。
しかし、ナイフを突き刺され傷口を掻き回された歯茎に先端が押し当てられた瞬間、
「ア、アア、アア、ッ、ッ……」
と、ジュリアスは顔を引こうとした。
デッドマンのペニスを血糊が汚して行く。裂けた肉が強引に剥かれ、血が噴き上がった。鮮血は肉棒を包み込むように口の中に溢れ返った後、唇の端からどぼどぼと流れて落ちた。
「ああッ! や…、やああアア、あ…」
肩を左右に振りながら、ジュリアスが嗚咽した。目尻から涙が溢れ、顔にこびりついた血を洗う。それでもデッドマンは、傷口をえぐることをやめなかった。
「媚びてみろジュリアス。ケンドールを殺す前のように、俺に服従してみな」
「ううっ…」
「『ボス、あんたのソレがなくっちゃ生きていけない』と、もう一度言ってみたらどうだ?」
そう言うとデッドマンは、一物をジュリアスの口から外した。
「ゲホッ! ゲ…ゲホッ」
栓を抜いた樽酒のように血が吐き出される。デッドマンはジュリアスの顎を掴んで上を向かせた。握りつぶすかのように、片手で頬を挟み込む。頬の上から歯茎を圧迫され、ジュリアスは苦痛に顔を歪めた。
「言え。もう一本抜かれてえか」
「ああ…や、…いやだ……」
「奥まで差し込まれるのが嫌なら、舌を使え。これが欲しいと哀願しろ。ケツにぶち込んでほしいってな。できるだろう? ちょっと前まで、自分からやってたことだ」
「……う…うう……」
その時、テーブルに横たわったジュリアスの中心を、スチュアートが握った。
「あっ」
ジュリアスは驚いたようにぴくりと身を震わせたが、足を閉じることはしなかった。そこは、優しく愛撫されることを悦んでいた。
「いいぜスチュアート。そこをもっと嬲ってやれ。こいつを屈服させるには、それが一番簡単な方法なんでな。自分一人じゃ何もできねえ。若い体を持て余して悶々とするしかねえんだ。何せ、両腕がねえんだからな。ハッハッハ」
デッドマンはせせら笑った。
スチュアートは、リンチの最中にジュリアスを犯してしまった――しかも、苦悶にもがく姿に興奮さえした――ことを後悔しながら、まるで懺悔のように手を動かした。せめて快楽を与えることで、彼を少しでも楽にしてやりたいと願った。
包皮を剥き上げ、指を使って亀頭を刺激する。先走りの恥汁がぐちゅぐちゅと音を立てる。スチュアートは回転を加えながら、竿を強くしごき上げた。
「あ…あ…ああ、も…、もうっ」
快感が脳天に突き上げ、ジュリアスは腰をくねらせた。デッドマンが、彼の頬を挟んだ手に力を込め、視線を合わせるように促す。
「体は正直だな。ケツの穴が疼いてしようがねえだろうが」
「ああっ、は…はあ…あ……」
「あれも芝居だったと言い張るつもりか?」
「ボ…ボス…の、じゃ……ないと……」
「舐めろ」
デッドマンはジュリアスの前にペニスをかざした。ジュリアスは舌を伸ばし、自分からその先端をねぶり上げた。亀頭にまとわりついた自分の歯肉の欠片を舐め取りながら、雁首に唇を吸い付かせる。
スチュアートの舌もまた、絡み付くようにジュリアスをねぶっていた。亀頭に舌の表面を這わせ、丸ごと飲み込むようにずっぽりとしゃぶりつき、舌先で尿道口を突つく。
「ん…、んん、んうっ、はあああっ…」
「一人で感じてねえで、もっと舌を使え。ぶち込んで欲しいんだろう」
「あ、はう…うっ、んっ、んふっ、ぐううっ」
デッドマンは、突き出したジュリアスの舌に擦り付けるように、肉刀を上下に振った。
やがて、髪を掴んでジュリアスを遠ざけると、デッドマンはテーブルに腰掛けた。
「降りろ、スチュアート。最後までやってやれ」
スチュアートを退かし床に座らせる。そして、細いジュリアスの体を抱え上げて膝の上に座らせるように乗せた。背中の傷がデッドマンの胸で擦られ、ジュリアスは唸った。デッドマンはスチュアートに見せつけるように、大きく反り返った男根の上に、ゆっくりとジュリアスの尻を落としていった。
「ああっ…、ボスッ、いいっ!」
ジュリアスが目を潤ませた。肛門が徐々に押し広げられ、太い肉棒が奥まで埋め込まれる。デッドマンはジュリアスの腰を抱えると、焦らすように小刻みに上下に揺さぶった。
「はああっ! ああ…、ああっ、もっ…、もっとーっ!」
我を忘れ、ジュリアスは悦楽に打ち震えた。スチュアートの挿入で中途半端な刺激を受けた肉穴は、内部を暴力的に摩擦されることを求めて、ひくひくとうごめいていた。
同時に、大きく広げた長い脚を両手で支え、スチュアートがジュリアスの股間を舌で弄んだ。それはすぐに膨らみいきり立ち、彼の唇に挟まれて大きくなった。舌で亀頭を舐め回しながら、陰嚢を持ち上げ、掌で優しく包み揉みしだく。同時に包皮をしごいて雁首の周囲を強く絞り上げた。
「ああああっ! いいっ! イイッ! はあアアンッ!」
ジュリアスは高まりながら、舌を外へ突き出し喚き散らした。ゴボッと音がして、口の中に溜まった血が吐き出された。それは彼自身の胸とデッドマンの手、そしてスチュアートの額にふりかかった。
やがて、デッドマンが腰を力強く突き上げ、ジュリアスの体を物のように乱雑に動かし始めた。
「アァーッ!!」
ジュリアスは獣のように吠えた。彼もまた絶頂が近付いていた。スチュアートが夢中でペニスを頬張り、亀頭にむしゃぶりついた。ジュリアスの内部から、絞り出されるように雄汁が出口を求めて這い上ってきていた。
「イクっ! いくうウゥゥッ!」
デッドマンがジュリアスの首筋に顔を埋め動かなくなったのと同時に、ジュリアスから噴き上がった白濁液は、スチュアートの喉の奥へと流れていった。
ジュリアスはがっくりと体を前に折り、そのまま意識を失った。
気がつくと、ジュリアスはベッドに横になっていた。
「気がついたかね?」
スチュアートが、側の椅子に腰掛けていた。
「モルヒネがまだ効いているだろう。しばらく休むといい」
「……ああ」
ジュリアスは、舌先を動かし歯茎の状態を確認しようとした。しかし、モルヒネのせいで、舌はろくに言うことを聞かなかった。
眼球を動かし、体を見下ろす。白い包帯が巻かれているのが見えた。背中の傷も治療済みだ。ジュリアスはようやく落ち着いた様子で、軽い溜め息をついた。
「君は、マックモーディというんだってね。私もアイルランドだ」
「……」
ジュリアスは黙っていた。うまく唇を動かすことができなかった。その沈黙を違う意味にとらえたのか、スチュアートは深く頭を下げた。
「すまなかった。君を……傷つけるつもりはなかった」
「ああするしか……なかっただろ」
ジュリアスは、言葉を絞り出した。
スチュアートはしばらくの間、言葉を返さなかった。しかしやがてぽつりと、
「ボガード大佐は……変わったな」
と、呟いた。
「……」
「モーガンなんかと違って、ボガード大佐の部隊は、実に紳士的だった。美しかった。彼は根っからの軍人であるとともに、誇り高い南部の男で、曲がったことや汚いことは大嫌いだった。キャンプ・ダグラス……捕虜収容所で終戦を迎えたことは聞いていたが、どうしてこんなことに……」
スチュアートは肩を落とした。
ジュリアスは口を開こうとして、呂律が回らないことに気づき黙った。
今さら、戦争がもたらした不幸を語っても意味がない。そう思いながらジュリアスは、枕元の聖書に頬を押し付け、そっと目を閉じた。
『お前も同じだ。てめえの身を守るためなら、平気で俺を裏切りやがる』
頭に残っていたデッドマンの言葉の意味を考えるのは、明日にしようと思った。
(了)
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