Case10
ジッポーライターの炎であぶったキリの先が、男の悲鳴を無視して亀頭に突き刺さった。
「グギャアアアアアッ!!!」
ジューッと肉が焼け、傷口から一筋、煙が上がった。少しだけ漏れた血液も、熱で凝固してしまったように皮膚にこびりついている。
そこで拷問執行人は、一気にキリを引き抜いた。同時に、穴からぷしゃっと血が噴き出し、男自身のジーンズを赤く濡らす。
「ウッ、ウッ、やめてくれえ……、も、もうこれ以上……」
「フフフ。まだ喋ってねーことがあんだろ? 全部聞くまでやめらんねーなぁ」
「待ってくれ……思い出すよ。思い出すから、少し時間を……」
「待てねーんだよ」
そう言うと執行人の青年は、レザーパンツのポケットからプラスチックの小さな箱を取り出した。銀色の棒のようなものが数本、カラカラと音を立てた。
「わかった。じゃあ、手当てしてくれたら喋るよ。交換条件だ。いいだろ? なっ?」
男がまくしたてる間、青年は無言でケースの蓋を開けた。そして指でその中の一本を摘む。
「呼び径4ぐらいか。ちょっと太いかな」
「ネ、ネジなんかどうすんだよっ。ま、まま、まさか。や、やめて、アアアーッ!」
「残念だったな。皿タッピングだよ。全部埋まって、頭が出ないタイプのやつ」
「頭なんか関係ねぇよう!」
「そうか? 真珠入りみたいになって、いいと思ったんだけど」
青年は、男の顔を覗き込みながら、ビスの先端を傷口にねじ込んだ。
「アギャアアアッ!」
長さ40ミリのビスが、ぐるぐると拷問執行人の指で回されながら、肉にネジを切り、傷口の内部を更に破壊していく。
「アアーッ、ギ、ギヤ、アアッアアーッ!!」
「どうだ? 吐いちまえば楽になるぜ」
「そ、そんな…、ヒ、ヒイッ、ヒイイイッ!」
「言えってんだよ。しまいにゃキレるぞ、俺」
青年は、エンジニアブーツのナイフポケットに差し込んであったプラスドライバーを抜いた。そのまま先をビスの頭にはめ込むと、無造作に捻り始める。圧倒的な力が加わり、みるみるうちにビスが肉の中に埋まっていった。
「ウギャーッ!!!」
「チッ。血で回らねーよ、もう」
舌打ちし、乱暴にビスを引き抜く。そしてそれを床に投げ捨てると、左手に握り締めたドライバーを躊躇なく血まみれの穴にぶち込んだ。
「ギャッ!!!」
最後の大きな悲鳴をはり上げ、男は気絶した。
「肉は脆いからダメだな。次は骨だ骨。どこに打つかな」
亀頭に突き刺さったままのドライバーの取っ手を指で弾きながら、ボソリと青年は呟いた。
(了)
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