Case08
ガシャッと音がして、シャンパングラスが割れた。
革手袋をはめた掌に、グラスの脚と、無数の破片が握られている。
「ヒ、ヒイイッ、そ、それ、どうしようってんだよっ?」
男はテーブルの上に仰向けに縛り付けられていた。
上半身だけがのけ反った形で台の上に寝かされ、下半身はテーブルの脚と並ぶように地を踏み締め、大きく開かれて縛り付けられている。男は、何も衣類を身に着けてはいなかった。
青年は、握り潰したグラスをそのままそっと持ちながら、男の方に近付いてきた。
「握力ねーからよ。粉々にできなかったよ」
そう言うと、青年は男の腹の上に、グラスの脚と大きな破片をいくつか置いた。
「や、やめてくれよう……」
「話が途中だったろ?」
「もう全部喋ったよ。喋れば助けてくれるって言ったじゃないか!」
「助けてやるよ。命だけはな」
青年は、掌を広げ、革手袋の上の細かい破片を蛍光灯にかざした。
「頼むよ、信用してくれよ。きれいなニイちゃんよう」
「顔のこと言うなよ。気にしてんだよ。目立つから」
「何でだよ、いいじゃないか、男前……」
次の瞬間、青年は破片を手にしたまま、男の睾丸を掴んだ。
「アアアアッ! い、痛いっ痛いっ、ヒイイイイッ!」
「これぐらいで騒ぐんじゃねーよ。これからだよ、これから」
青年は、更に強く玉を握り締めた。無数の破片が陰嚢に刺さり、血が滲む。
「や、やめてくれーっ、潰さないでっ」
男は涙を浮かべながら、震え始めた。
それを見ながら青年は、腹の上に置いた大きめの破片を手に取った。
そして、竿の付け根の部分の皮に押し当てる。数センチ、皮が裂けて血が溢れ出した。
「ウギャオォアッ!」
青年は、玉を握っている手を、そのまま上に持ち上げた。睾丸が竿の根元に寄ってくる。
「ここから取り出してやろうか、え?」
「そ、それだけはーっ!」
「中、見えねーなあ。血ィ、出過ぎだよ。バーカ」
「ウッ、ウヒッ、ヒ、ヒイイイ……」
流れ落ちる血液が、革手袋を染めていく。青年は、折れたグラスの脚を掴み上げた。
「切れ目から突っ込んでほしいか、下から突き刺して欲しいか決めな」
「わかったっ! 言う! 言います! 言うからやめてーっ!」
「うるせー! どーだっていーんだよっ! そんなことはよっ!」
青年は力一杯、叩き付けるように上の傷口からグラスを突き刺した。
長い悲鳴が地下室に響き、やがて、静寂が訪れた。
陰嚢の下まで突き破ったグラスの脚を伝って、赤と白の混ざったどろどろとした液体が床に落ち始めた。
(了)
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