Case07

 真新しい腕時計の針が、午前零時を回っている。
「おい。口開けさせな」
 拷問執行人の命令に、若い少年たちは従順に従った。
「やっ、やめ…ウ、ウグァーッ!」
 ベッドに大の字に拘束された男の口が、強引にこじ開けられる。
 二人がかりで押さえ付けても、必死で抵抗する男の歯が、少年たちの指に食い込んだ。
「悪いな。すぐおとなしくさせるからよ」
 青年は、上から男の顔を覗き込みながら、
「てめえの馬鹿力を恨むような思いをさせてやるさ」
 そう言うと、後ろ手に持っていたものを顔の上にかざした。
「ア、アガガガ……」
「この子たちが集めてきてくれたんだけどさ」
「オ、オゴァッ、ガアアッ」
「このへん都会の割には、飼い主がちゃんと片づけてくみたいでよ」
 その瞬間、男は、青年の指の間からぶら下がるコンドームの中身を理解した。
「ガーッ、オゴガガガ、ガーッ!」
「ピンク・フラミンゴって映画を知ってるか?」
 青年は、笑いながらそれを、男の口の奥に落とし込んだ。
「アーッ! アガガ、グアオオーッ!!!」
 ゴムの先端が結んであるとは言え、薄皮一枚挟んで感触が伝わってくる。
 男は半狂乱になって首を振ろうとした。が、頭を少年たちに押さえ込まれて、口の中のものを吐き出すことはできなかった。
 青年はベッドを離れて、後ろの台に置いてあったカテーテルを手にした。
「力入れて、ゴム破くなよ。そういうスカトロはごめんだぜ」
 男の下半身に近付き、ジーパンとブリーフを引きずり下ろす。
 そしてむき出しになった股間に、カテーテルを叩き付けるように置くと、青年は、
「さ、こっちに注入するもんも、集めてきてもらうか」
 と、顔を上げて少年たちを見やった。
「金曜日だからな。歌舞伎町のほうまで足伸ばせば、大量にあるぜ。酔っ払いのやつがな」
 少年たちは息を飲み、慌てて扉を開けて階段を駆け上っていった。
「帰って来るまで、噛み切るなよな。俺の楽しみ奪うんじゃねーぞ」
 青年は男を見下ろしながら、男の足下で皺になったジーパンのベルトを引き抜き、ゆっくりと構えた。
(了)

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