Case05
ピーッと軽やかな音が、部屋に響いた。
「始めるか」
パイプベッドに腰掛け、ぼんやりと煙草を吸っていた青年が、煙草の火を消して立ち上がった。
「ま、待て! おい、本気かよ、おいっ!」
壁に据え付けられたX字型の磔台で、男は慌てて叫んだ。
全裸で手足を鉄の枷で固定されている。しかも両足は、これ以上は開かないというほど左右に大きく広げられ、腿も脛も鎖でがっちりと磔台にくくりつけられていた。
執行人は無言で、テーブルの上の器具を手に取った。
「やめてくれっ! 頼むからっ!」
「うるせーなあ」
「あ、あんた、金で雇われてるだけだろ? なあ、その金の倍、払うよ。だからさ、今日から俺の味方につかないか? な、な、そうしようぜ」
「………」
「と、取り引きしよう! とりあえずそれ、置いてくれよ。話しあおうよ。なっ?」
早口で哀願する男の顔を、青年はじっと見つめた。そして、
「悪いな、金じゃねーんだ」
と、ぽつりと言った。
「お、おいっ、やめろ、近付くなっ」
「恐いか?」
「頼むからやめてっ、来ないでくれーっ! ヒイイイッ!」
青年は、口の片端を上げて、笑った。
次の瞬間、男のペニスに高熱のアイロンが押し付けられた。
「ギャアアアアアアッ!」
ジューッ、と皮膚があぶられる音がした。同時に陰毛が焼け、悪臭が漂う。
何度も、熱い鉄の塊を、亀頭から陰嚢までまんべんなくあてがう。
その都度、男は断末魔のような悲鳴を張り上げた。
「グォアアアアアッ! ウォォォァァーーーッ!」
「お前のこれを使い物にならなくしてくれって、頼まれただけなんだけどさぁ」
「アアアアアッ、クハァァァ……」
「ちょっと趣味入っちまってよ」
そこまで言って、青年はアイロンの動作ランプが消灯していることに気が付いた。
「チッ、フィードバックしやがった」
青年は、焼けただれたペニスからアイロンを離すと、テーブルの上に置く。
「い、医者呼んで……頼むよぅ……」
男の消え入りそうな声を無視して、青年は、
「しまった…。二台用意すればこう……シンバルみたいに挟んで……」
ぶつぶつと呟きながら、再び音が鳴るのを待っていた。
(了)
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