Case04
「人間の体に、いくつ穴があるか知ってるか?」
拷問執行人が闇の中で尋ねた。
「え、と……」
手足をロープで縛られ、冷たいコンクリートの床に転がされた男は、答えに詰まった。
その反応の遅さを気にする様子もなく、青年は言葉を続けている。
「男が10個、女が11個。わかるよな」
地下室に明かりは灯されていない。扉の隙間から、地上へと続く階段の電灯だけが微かに差し込んでいる。
男は、拷問執行人の顔さえ、はっきりと見えてはいなかった。
「俺は、その穴を塞いでやるのが好きでね」
青年の足音が響き、近付いてくる様子がわかる。そして、横たわった男の頭のそばに、黒いエンジニアブーツの爪先が置かれた瞬間、
「ヒャッ」
男は驚いて悲鳴を上げた。
顔の上に、水滴が落ちてきたからである。ポトリ、ポトリとそれは続いた。ひどい悪臭を伴って。
「な、何してるんだ。何だよ、その水?」
おそるおそる、男は尋ねた。
それを待っていたかのように、靴底が男の顔を踏み付けた。
「ウアアッ」
「風呂場と台所とどっちがいい?」
「な、な…ウ、ウウ……」
「排水口のゴミなんだけどさ」
「ヒッ、ヒーッ、い、いやだっ、そんなの、やめてくれっ!」
「喋ったらやめてやるけど」
「さっき上で喋ったので全部だよっ! 本当だ! 本当だよ!」
「穴を全部塞いでも、そう言うかどうか試してやるよ」
男の顔の上に、内容物を含んだナイロンのネットが、ビシャッと音を立てて落ちてきた。
「いやだァァッ!」
そのネットを、青年は男の顔に擦り付けるように踏みにじった。汚水が頬を伝い、鼻孔に流れていく。
「さあ、どこの穴から詰め込んでやるかな」
「やめてくれよぅ…」
「顔は後回しにして、股間の2つをいっぱいにしてやろうか、え?」
「いやだァ! ヒイイッ!」
「どっちがいいんだよ?」
「どっちもいやだア!」
「じゃあ、しようがねーな。新しい穴を作ってやるよ。ザックリとな」
そう言うと、青年はブーツの脇からナイフを抜いた。
(了)
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