Case02
「いいかげん、吐いたら?」
渇いた声が、それまで途切れることなく続いていた男の悲鳴を遮った。
「ヒッ、ヒッ、も…もう許して……」
「吐いたら許してやるよ」
「こ、これ以上…は、本当に…」
「あっそ。じゃ、そうしてな」
くわえ煙草で、青年は冷淡にそう言い放つと、再びモニタに顔を向けた。
青年はその地下室の隅に置かれたMacintoshに向かっていた。時折、マウスをクリックする音が小さく響く。
男は両手を体の後ろに回され、天井から吊り下がる滑車にロープで縛りつけられていた。
足は宙に浮いてはいないものの、床に触れているのは裸足の爪先のみで、上半身は前傾している。男が体を揺らすたびに、滑車がギシギシと音を立てた。
「なあ。エグめの死体画像、見る?」
青年が煙を吐き出しながら、モニタを男の方に向けた。
男は答えなかった。
ただ、何もまとっていない下半身――ゴム一枚を除いて――を震わせながら、必死で拷問に耐えていた。
青年はチッと舌打ちすると、インターネットの接続を切った。
「ネットサーフィンも飽きちまったんだよ。そろそろ終わりにしねェ?」
「う…うう…」
「寝ようかな、俺」
「ま…待って……」
「一晩そのままにしといてやろうか」
「ヒ、ヒ……、助けて…」
「待ってな。もっとイキのいいのに替えてやるぜ」
そう言うと、青年はレザーパンツのポケットから携帯電話を取り出した。
「ああ、俺。悪いけど、追加してくれる? そうだな。ちょっと大きくなったやつ」
喋りながら青年は、全裸の男が唯一身につけているコンドームを外しにかかった。
ペニスの根元に巻いて、固定していた輪ゴムと同時に取り去る。
直後、床に落ちたコンドームの中から、無数のゴキブリの幼虫が這い出てきた。
「明日の朝が楽しみだな」
青年は笑いながら、小さく縮んだ亀頭の表面を歩く幼虫を、指で尿道に押し込んだ。
(了)
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