拷問官は工具箱の蓋を開け、電動工具を取り出した。
それを見て囚人は、思わず声を上げた。
「ひっ…ヒイイッ……」
拷問官が手にしていたのは、先ほど用いられた電動ノコギリと同じようなものだった。
先端にディルドゥではなく、30センチほどの細い針金がセットされている。
グリップをしっかりと握ったまま、拷問官は工具を囚人の目の前まで持ってきた。
「よく見ろ。こいつをどうするかわかるか?」
「……あぁ、あああ……」
「カテーテルの中にも楽に入る。極細の針金だ」
「や…やめて……やめてください……あああっ…」
囚人は激しく顔を左右に振った。表情が恐怖で強張っている。
拷問官は両手で工具を持ち上げ、冷たい針金で囚人の額の汗を拭った。そして、
「補佐官をもう一人呼んでくれ」
と、囚人のペニスとカテーテルを支え持っていた補佐官に耳打ちした。
補佐官はすぐに、携帯電話で連絡を取った。
程なくして拷問室の扉が開き、拷問補佐官がもう一人、入室してきた。指示を受け、囚人の背後に回る。
「さて……と。始めるか」
「お願いします……それだけは……お願い……」
「言い忘れていたが、こっちは電動ノコギリじゃない」
「え…?」
「電動ドリルだ。まあ、切刃がついてるわけじゃないから、内部が削れることはない。もっとも……」
拷問官は、囚人の目の前でスイッチを入れた。ギュルルルルッと音がして、針金が猛スピードで回転する。先端は空中に大きな円を描いた。
「遠心力で、先っぽはこういうことになる。フフフッ」
「いやあああっ!」
拷問官は一旦、ドリルを停止した。ペニスを支え持っている補佐官が、カテーテルの納まった尿道口を上に向ける。
カテーテルの中に、ゆっくりと針金が差し込まれていく。
「やああっ! やだっ! いやだ! やだあぁっ!」
半狂乱になって、囚人は喚き散らした。その直後、無情にも電動ドリルのスイッチが入れられた。
凄まじい音と共に、針金が男根の内部で回転を開始した。
「ギャアアアアアアアッ!!」
奥の、最も痛みを感じる尿道括約筋の周辺を針金の先が勢いよく嬲った。
激痛などという生易しいものではない。僅か5秒程度で、尿道口から鮮血がほとばしった。
スイッチを止め、拷問官が尋ねる。
「どうだ? 話す気になったか?」
「ああっ……は、話します……何でも……」
「お前は、自爆テロで死んだ男と、これまでもずっと連絡を取っていた。言わば、スパイだった。違うか?」
「……。……そ、…そうです……間違い…ありま、せん……」
「敵対する宗派の人間を欺くため、恋人を作り同棲した。何の愛情もなかった……これは?」
「はい……そうです。僕は、彼を……隠れ蓑に、利用していただけ……です……」
「フン」
拷問官は、再びドリルのスイッチを入れた。
「ひぎゃああああっ! アガアアッ!」
「ここへきて、嘘をつくとはいい度胸だな」
「本当ですっ! 本当ですぅっ!」
拷問官はスイッチを切らずに、ゆっくりと針金を10センチほど抜いた。そしてまた、奥まで突き刺す。
「ギャーーーッ! ギャーーーーッ!」
「一生垂れ流しになるぞ。いいのか?」
「ヒガアアアアアッ! やべでええええっ!」
「よし、ケツの穴もやれ!」
拷問官の指示と同時に、再び改造バイブがズブッと肛門に沈められた。 ガガガガッという音と共に、電動ノコギリがピストンを始める。
「ヒギャーーーーーッ! あっ、あががっ! ぎゃ、ギャアッ! グギャアアアアアアアッ! アアアアアーーーーッ!!」
尿道と肛門。下半身の二つの穴が、電動工具によって破壊寸前までいたぶられる。
囚人はもはや、人の声を発してはいなかった。獣のように断末魔の悲鳴を張り上げるだけだった。
「あぐあぁ! ぐへあああぁあああ~~~~ッ! ひぎっ、あへっ、ギャハアァッ! ウオオッ、ウグォオオオオーーーーッ!」
拷問官がドリルのスイッチを切った時、囚人は白目を剥いて、涎を垂らしていた。
針金を抜き、無造作にカテーテルを引き抜くと、ホースから水がほとばしるように、尿道口から真っ赤な血がとめどなく流れ出した。
拷問官は補佐官に合図して、電動ノコギリもストップさせた。
囚人のぽっかりと開いた口から、ろれつの回らない声で歌が聞こえてきた。それは彼の卒業した小学校の校歌であったが、そのメロディを知る者はその場にいなかった。

続く