その時、拷問室の扉をノックする音が響いた。
すぐに拷問補佐官が扉を開け、廊下に立っていた制服の男から書類を受け取った。
敬礼して扉を閉じた補佐官は、真直ぐ戻ってくると、書類を拷問官に手渡した。
仕事の手を休めた拷問官は、書類を読みながら、バットを一気に囚人から引き抜いた。
「ギャーッ!!!」
尻の穴から大量の血液を噴き出し、囚人はガックリと頭を前に垂れた。
その姿に向かって、拷問官は静かな口調で話しかけた。
「お前の故郷の家で、例の物が見つかったそうだ……が」
「……」
「ダミーだったようだな」
「……え……?」
囚人は汗と涙にまみれ、信じられないというような顔を見せた。
「お前に渡したと見せかけて、お前に注意を向けたというわけだ」
「……どういう……ことですか……」
「わからないか? 我々がお前を締め上げている間に、逃走しようとしたのさ」
「そんな……」
囚人は両目を見開き、わなわなと震え始めた。
「治療を施し、釈放してやる。済まなかったな」
「そ…それじゃあ本物は、どこに……?」
「ン? 無事に発見したよ。本人の体の中からな」
「彼の……?」
「初歩的な手口さ。コンドームの中にブツを入れ、それを飲み込む」
「……」
「コンドームには糸をつけて、糸の端は奥歯に括りつけておく。後から吐き出せるように」
「自分で……」
「そうだ。それで隠し通せると思ったらしい」
「……」
「お前を使って時間稼ぎしたことで、安心していたようだな」
囚人は拷問補佐官の手で、両足を濡らしていた鮮血を洗われた。
その間ずっと、彼は唇を噛み締めたまま呆然としていた。
やがて囚人は、決意したように口を開いた。
「彼に……会わせてください」
「無茶を言うな」
「僕は……信じていたのに。ずっと、ずっと!」
「気の毒にな」
「一目でいいんです! 会わせてください!」
「不可能だ」
「お願いします!」
「発見した、としか言ってなかったか。摘出したんだ。喉を裂いて」
「……あ」
「入れ物のほうはすでに廃棄されたと書いてある。残念だが」
(了)
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