万力を外すと、骨を砕かれた親指の皮膚が、だらりと下に伸びた。
辛うじて表面に残っている爪の周囲から、血が溢れている。
「はあ…、はあ…っ……」
囚人は息を切らして、激痛に耐えていた。
その横で拷問官は、拷問補佐官に耳打ちした。
すぐに補佐官は、事務机の引き出しからアイマスクを取り出した。
「本当の恐怖とはどういうものか、味わうといい」
拷問官の指示で、アイマスクが囚人の視界を覆った。
鉄柱に括りつけられ、目隠しをされた囚人は、小さな声で哀願した。
「お願いです。許してください……」
「受け取った物を差し出せ。すぐに解放してやる」
「ぼ、僕は本当に何も……」
次の瞬間、囚人は脇腹にチクッと痛みを感じた。
「い、痛っ!」
続けて右の太腿に、同じような刺激が与えられた。
「あ、うっ!」
一個ずつ、画鋲が皮膚に刺し込まれていた。
一回の刺激自体は、悲鳴を上げるほどの痛みではない。
しかし目隠しをしているため、どこを刺されるのかわからない。
「どうした? 答えを待っているんだが」
「ぼ、僕は……ああっ!」
鎖骨の脇に痛みが走る。続けて左手の甲が刺された。
画鋲が刺さったままの場所のそれぞれが、鈍い疼痛を発している。
暗闇の中で、囚人は次の衝撃に怯えた。心の準備をすることもできなかった。
突然、右の頬に針が刺さった。
「はがあっ!」
間をあけずに、左側の首に画鋲が食い込んだ。
そして同時に、両方の乳首が餌食となった。
「ひいいっ!」
太い針がぐりぐりと敏感な突起に穴を空けた。
「友達だと思うな。お前がこんな目にあうのは、そいつのせいなんだぞ」
拷問官は乳首に刺した画鋲を回しながら言った。
「あうう…くうっ」
「このまま、全身画鋲だらけになるつもりか」
喋りながら、拷問官は補佐官に目配せした。
補佐官が囚人のペニスを掴み、上に向ける。
あらわになった陰嚢の部分に、拷問官は容赦なく画鋲を突き刺した。
「あぐぁあっ!」
「クックック…。玉袋をメモボードにしてやろうか」
萎縮した陰嚢に、続けざまに針が刺される。囚人は恐怖に耐え切れず、絶叫した。
「あーっ、許してェッ! ヒイィッ!」
拷問官は、プラスチックの箱に残っていた画鋲をザラッと床に落とした。
そして囚人の足元に散らばった画鋲をブーツで集め、裸足の爪先に押し付ける。
「アアッ、痛いっ! いやあァーッ!!」
幾つかの画鋲は足の指の間に突き刺さり、幾つかの針が爪の中に食い込んで行く。
更に一つの画鋲が、てこの原理で小指の爪を僅かに剥がした。
続く