拷問補佐官は、囚人の体を抱え上げ、ひじ掛け椅子に座らせた。
手首、そして足首が、ベルトで椅子に固定される。
囚人は力なく首を前に折り、体中の打撲の痛みを堪えていた。
しかし次の瞬間、頭を強引に持ち上げられ、椅子の背に後頭部を密着させられた。
額の上からベルトが巻かれ、頭までもが拘束された形になる。
拷問補佐官が作業を行っている間、拷問官は部屋の隅で工具を選んでいた。
やがて囚人の前に歩み寄った拷問官は、黙ったまま囚人の鼻をつまんだ。
「……っ!」
呼吸ができず、思わず口を開ける。
拷問官は待っていたように、その口の中に指を入れ、上下にこじ開けた。
「これは拷問じゃない。懲罰だ。嘘をついたことのな」
そう言うと、拷問官は囚人の舌をペンチでつまんで引き出した。
「あっ、アガガガッ」
「このまま引っこ抜いてやってもいいんだが」
「アッ! アオオオッ!」
「それじゃあ秘密を聞きだせなくなるんでな。舌は残しておいてやるさ」
拷問補佐官が、静かに拷問官の傍らに立った。手に金属の箱を持っている。
拷問官は箱の中から、一本の縫い針を手に取った。
そしてそれを、ペンチでつまんだ舌の表面に突き立てた。
「アガアァッ!!」
囚人が悲鳴を上げた。しかし、頭は椅子に固定されていて動かない。
拷問官は立て続けに、その周辺に何本も縫い針を刺し込んだ。
「アーッ、アアーッ」
悲痛の声と共に、涎が口元から垂れ落ちた。
囚人は力を振り絞って口を閉じようとした。が、ペンチの先が舌に食い込むだけだった。
「おい。上の方をどうにかしろ。舌を噛む」
拷問官は補佐官から針箱を受け取り、それを囚人の膝の上に置いた。
拷問補佐官は工具箱の中から小型のバールを持ってきて、囚人の横に立った。
上の歯を覆うようにハンドタオルで押さえ、タオルと舌の間にバールの先端を入れた。
そして、タオルの上から上顎をバールで持ち上げた。
「アッ、アアアーッ! ハガァッ」
囚人は、バールで無理矢理口を開けた状態にされた。
「暴れると前歯が折れるぞ。フフフ」
拷問官は笑いながら、針箱の中から注射針を取り出した。縫い針よりも長い。
囚人の舌に、注射針が直角に突き落とされた。
「がアッ!」
拷問官は、注射針から手を離さなかった。小刻みに動かし、刺した部分の穴を広げる。
「あがっ、あがあっ、はああっ、ああーっ」
激痛に、囚人の目から涙があふれた。
その反応を楽しそうに見守りながら、拷問官はぐりぐりと針を動かした。
「ああっ、はがあっ、あアーッ、アーッ!」
「少しはこたえたか」
「アハアア、アハッ、ハガガ……」
「そろそろ許してやるか」
そう言うと拷問官は微笑んで、思いきり注射針を深く差し込み、舌からペンチを外した。
「ギャーッ!!!」
下まで貫通した注射針が、ペンチの外れた反動で下唇に突き刺さった。
拷問補佐官もバールを外したが、囚人は口を閉じることもできなかった。
ただ、針山のようにされた舌を突き出し、流れ出る血液を滴らせているだけだった。
拷問官は、囚人の紫色に腫れ上がった体を見渡すと、腕時計に目を落とした。
「体力的に限界だな。医務室へ運べ。その後は独房に戻すように」
拷問補佐官は敬礼してその命令を聞いた。
「次回のM-2011の拷問日時については、調整しておく。ご苦労だったな」
拷問官はそう言って補佐官を労うと、囚人の顏は見ずに第1拷問室を出て行った。
続く