・Stage4.Cock

 拷問執行人は部屋の隅へ向かい、ドライアイスを冷凍庫へ戻した。
 地下室の一角に、小さな流し台とガスコンロが設置されている。
 ガスコンロの上にはヤカンが置かれていた。青年はヤカンに水を入れ、火にかけながら、振り向かずに男に尋ねた。
「コーヒー飲むか? 砂糖はないけど」
 戸棚から白いマグカップを二個取り出し、インスタントコーヒーの粉末を入れる。
 ビリヤード台に寝かされた男は、何も答えなかった。
 彼は大の字に拘束されたまま、じっと天井を見つめていた。もう、悪態をつく気力も残ってはいなかった。
 青年は戸棚の扉を開けて中を見ては閉め、別の扉でもそれを繰り返した。戸棚の中には、様々なキッチンツールが並んでいる。
「いろいろあるんだな。まあ、料理のためなんだろうけど」
 そう言うと、青年はそこから幾つかの道具を手に取った。
 そして、ゆっくりとビリヤード台に近付く。張り付けられた男は無言で、青年の動きに合わせ、視線を動かした。
 青年の手の中にある道具。それをどんな目的に使うのか、男には容易に想像ができた。泣きながら男は哀願した。
「頼むからもう、許してくれよ……。上の奴と話をさせてくれ…」
「いいぜ。俺が楽しんだ後ならな。さて……、どこに使ってやろうか」
 青年は男の目の前に、平たいおろし金をかざした。
「やめろ。やめてくれ!」
「顔か? 腹か? 足の裏か? それとも……」
 男の体の中心が、突然捻り上げられた。
「ヒイイイッ!」
「やっぱりここだよな」
 笑みを浮かべながら拷問執行人は、男の性器の先端におろし金の表面を押し付けた。
「いやだっ! やめてくれーっ!」
「その声、興奮するなー」
「許してくれ! そこだけは!」
「ここだけ無傷でいられると思ってんのか? バーカ。甘いんだよ」
 男の顔を上から見下ろしながら、青年は片手でペニスを握って固定し、おろし金を軽く上下に動かした。
「ぎゃあああっ!」
 目の部分に擦られて、皮膚が掻き切られて行く。無数の鋭い刃が亀頭の表面を削った。
「ひぎゃーっ! 助けてっ! 助けてっ! アガアァァァーッ!!!」
 尿道口に引っ掛かった刃が、縦に穴を広げる。じわじわと滲み出した血は、すぐにおろし金を真っ赤に染めた。
 浅く皮膚にめり込む凶悪な棘。瞬く間に、肉棒には幾筋もの傷が刻まれた。
 最初の数回はザリザリと音が響いていたが、やがて皮と肉片で目が詰まり、何の音もしなくなった。男の叫び声だけが、途切れずに地下室にこだましている。
 青年は、血糊で使い物にならなくなったおろし金を床に放り投げると、次はスライサーをペニスの側面にあてがった。
 たるんだ皮の部分に刃を食い込ませ、一気に引っ張りおろす。
「アアアアーッ!!」
 柔らかな皮が刃の間に入り込み、青年の手の動きを止めた。構わずに青年は、その皮膚を思いきり引き裂いた。そして男根の根元にスライサーの刃を押し当て、力強く引いた。
「アギャアアアァッ!」
 皮膚の表面が数センチ、つるっとめくれ上がった。裂けた箇所から、どろりと血があふれ出て来る。
「助けてくれっ! 誰か、助けてーっ!」
 拷問執行人は、その皮を指で摘み、ゆっくりと剥いだ。
「ヒギイィイイッ!」
 生皮が裂け、ベロッと赤い肉があらわになる。青年はそこに、直にスライサーをめり込ませると、一気に肉の表面を刃で削った。鮮血が噴水のように飛沫を上げる。
「ギャアアアアアアッ!!!」
「あんまり削ると取れちまうからな。楽しみは後に取っておくことにするよ」
「助けてくれ! 助けてくれぇ! 助けてくれよおっ!」
「命は助けてやるよ。人殺しだけはするなって言われてるし、俺」
「何でもする! 何でもするから、こっちで俺を雇ってくれ。組織は裏切る。だから……」
「うるせーな。わかったよ、何度も言わなくても」
 うんざりとした表情で、青年は耳を塞いだ。
 そしてビリヤード台の上に置いたままだったバタフライナイフを掴んだ。くるりと回して柄を握り、迷わず男のペニスに刃を突き立てる。
「グギャッ!」
 金魚の口のような小さな穴に、刃先がおさまった。ナイフはそのまま、ぐりぐりと尿道口を裂いて行く。
「ヒイィ、やめてっ、もう、そ、それ以上は……」
「やらせろよ。まだ足りねーんだよ」
「助けてくれーっ!」
「うるせえって言ってんだろっ! 何度言ったらわかんだよっ!」
 バタフライナイフが、一気に陰茎の奥まで差し込まれた。
「ギャアアアアアッ!」
 血飛沫が飛び散り、男の体と青年の手を真っ赤に染めた。
「てめーは苦しんでりゃいいんだよ。俺が満足するまでな……」
 青年は、奥まで突き刺したナイフをぐりぐりと回した。内部がズタズタに切り裂かれ、男の生殖器は、ただの肉の塊と化した。
 薄れて行く意識の中で、男はヤカンの湯が沸く音を聞いた。さっき、青年が火にかけておいたものだ。
 その音に気が付いた青年は、ナイフを男に刺したまま、ガスコンロに向かった。
 火を消してヤカンを持ち上げ、二つのマグカップに湯を注ぐ。
 ヤカンの中に、僅かに熱湯が残っていた。青年はそれを持ったまま、男の元へ向かった。
「や、やめろ! かけるな! かけるなーっ!」
男の叫びも空しく、傾けられたヤカンの口から熱湯が落ちて来た。切り裂かれたペニスが餌食になる。
「熱いっ! 熱い熱いィ! ヒギーッ!」
白い湯気が立ち上った。刺さったままのナイフが熱せられ、内部にも温度変化が伝わる。
続けて青年はヤカンの蓋を取り、残りをその場に思いきりぶちまけた。
「ギギャアアアアアアァッ!!」
 全身に熱湯をかぶった男は、断末魔の叫びを上げ、拘束された四肢がもげそうなほど激しくのたうち回った。

Stage5へ続く