・Stage1.Anus

 ほの暗い地下室の中央に置かれたビリヤード台に、全裸で男は縛り付けられていた。
 台の上に突っ伏し、足は地についた姿勢である。両足は台の脚に繋がれ、両腕は左右に大きく広げた状態で張り付けられていた。
 男は台に密着した頭を左右に動かしながら、拷問執行人に対して悪態をついた。
「てめえ、いいかげんにしろよ。こんなことして、タダで済むと思ってんのかっ?」
「知らねーなぁ。俺は頼まれた仕事をこなすだけさ。面倒なことは人に任せてる」
 拷問執行人の姿は、男からは見えなかった。彼は背後にいて、カチャカチャと音を立てていた。その音の正体がわからないことも、男が吠え続ける理由の一つだった。
 青年は平然としながら、男の裸の尻を指で弾いた。
「あんたも、頼まれたことをすりゃいいんだよ。簡単だろ」
「組織を裏切れっていうのか? 頭おかしいのかお前」
「頭、おかしいかもなー」
 言いながら、青年は男の尻にローションを垂らし始めた。
「ひっ、冷たい」
 男はローションの冷たさの中に、更に硬く冷たい感触を覚えた。その感触は、徐々に男の秘肛を押し開いて来る。
「ヒイッ!」
 肉体の内側を摩擦しながら、一本の長い棒のようなものが差し込まれた。
「や、やめろーっ」
 括約筋をかき分けて、奥まで挿入したところで、青年は手を止めた。
「もう一度聞いておくか。答えは?」
「バカ。ケツ掘られたぐらいで言いなりになるか」
「そうか。残念」
 次の瞬間、青年はブーツの先で男の尻を蹴り上げた。
「ぐあっ」
 蹴り付けた衝撃で、試験管が割れた。
「ひいぃっ!」
 男の体内で、鈍い音がした。
 続けて青年は、尾骨に踵を叩き落とした。
 肛門から飛び出ていた試験管の先が踵に当たった。バリッと音がして、破片がブーツにまとわりついた。それを叩き付けるように、青年は男の臀部を更に蹴った。
「や、やめてくれ!」
 青年は冷淡な表情を崩さないまま、破片がついていない箇所に膝で衝撃を与えた。
「ぎゃああっ!」
 直腸で、割れた試験管の破片がボロボロと小さくなって行く。幾つかの破片は無慈悲に尖り、肉壁に食い込んだ。
 男はようやく、先程のカチャカチャという音が、試験管を用意していた音だったのだと気づいた。
「二本目行くか」
「ヒッ!」
 青年は再び男の尻にローションを流し落とすと、二本目の試験管を肛門に押し込んだ。
 粒のような破片が腸内を擦り上げる。時折大きな破片が触れ合い、随所を切りながら奥へ進んだ。
「あぐぁあッ」
 男が絞り出すような悲鳴を上げた。
 二本目の試験管が、半分ほど男の尻に埋まった。青年は待ち切れないように男の体から離れ、勢いをつけて裸の尻を蹴り飛ばした。
「ぎゃあああッ!」
 ブーツの爪先で下から試験管の先を押し上げる。力が加わり、試験管が真ん中からポッキリと折れた。その折れた半分を、青年は男の尻で踏み潰した。グシャッと潰れたガラスの破片が、青年の靴底と男の肌に挟まれていた。その破片を皮膚になすりつけるように、青年は足を小刻みに動かした。
 細かい破片が靴底に擦られ、みるみるうちに男の皮膚は切り傷だらけになった。
「う、ああああ、かはあっ」
 男はぶるぶると震えながら、全身に冷や汗をかいた。直腸に残ったままのガラスの筒を割らないように、肛門の力を緩めている。
 それを見た青年は、男の双丘を両手で鷲掴みにすると、中央に向かって力を加えた。左右から押された中央の空洞は、すぐにその形を破片に変えた。
「や、やめてーっ! ヒィヤァァァァッ!」
 青年は握り締めたままの尻たぶを上下左右に動かした。肛門の周囲と直腸内がゆさゆさと揺れ、割れた試験管の破片が擦れ合った。男の肛門から血が吹き出した。内部の、出口近くの部分に大きな破片が刺さったようだ。
「グギャアアッ、や、やめてやめてっ、ヒギィィーッ!」
「次は三本目だぜ。ちょっと趣向を変えてみるからな」
 押さえ付けていた手を尻から離し、青年は再びビリヤード台から離れた。
 男の尻から流れ出た血が、ポタポタと床に落ちる。
 男は涙を流しながら、苦痛に喘いでいた。
「許して…許して……」
 三たび、男の肛門にローションが塗り付けられた。
 冷たいガラスの管が、傷ついた穴を広げて割り込んで来る。
 三本目の感触は、それまでとは少し違った。表面に僅かな突起が感じられる。底の方からではなく、上の方から挿入しているのだと男は理解した。
 しかし次の瞬間、男は絶叫した。
「ウギャアァァッ!!!」
 強烈に熱い液体が注がれた。あらかじめ試験管の中に仕込まれたものが、直腸に流し込まれたのである。火傷しそうに熱いそれは、熱湯ではなく唐辛子の刺激だった。
「フフフ。お湯で溶いてみたんだけど、効くみたいだな」
「ヒッ、ヒイッ、ヒッ、ハ、ハッ、ハッハ、アアアッ、アア!」
 ガラスの破片が詰め込まれた尻穴を、唐辛子の液体が嬲った。無数にできた擦り傷に染み込みながら、傷口を腫れ上がらせる。
 青年は笑いながら、ビリヤード台の上に登った。
 悶絶する全裸の男を見下ろし、青年は上から尻を踏み付けた。
「ギアアァッ!」
 肛門に差し込まれたままの、唐辛子の入った試験管にヒビが入った。
 更に青年は、足を踏みならすように何度も尻を踏んだ。
 衝撃で、三本目の試験管がバキッと割れた。熱い汁とガラスの破片が混じり、男の体内に注ぎ込まれた。
「ヒイィギャアァアァ……」
 男は断末魔の悲鳴を上げながら、泡を吹いて気絶した。
 同時に彼の肛門から、血と唐辛子汁の混じった真っ赤な液体が噴出した。それは、蛇口の壊れた水道のように、いつまでも止まらなかった。

Stage2へ続く