肉たたき棒

僕は薄暗い部屋の中、ご主人様がおいでになるのを待ちます。
僕がこの部屋に来て、ちょうど一ヶ月目になります。
今日は、特別な日です。
僕が一番望んでいたことを、ご主人様がしてくださるのです。
我がままだと思われないでしょうか。生意気だと嫌われないでしょうか。
少し、心配でした。
やがてドアが開き、ご主人様がいらっしゃいました。
ご主人様の顔を見ると、不安も吹き飛んでしまいます。
ご主人様の手には、角材が握られていました。
細いものでしたが、一メートルほどの長さがあります。
「これをどうしてほしい? お前がしてほしいことをしてやるぞ」
僕は困りました。答えは決まっているのです。
ご主人様を見ただけで疼いてしまう、僕のいけない穴に、それを……。
でもそれは、言えませんでした。それは、僕の都合だからです。
僕は、まずご主人様がしたいことを、お受けしたいと思いました。
「どうぞ、ご主人様のお好きなようになさってください」
僕は、体を前に倒し、床に額を擦り付けました。
裸の背中があらわになります。
その背中に、ご主人様は角材の先端をそっと当てがわれました。
「覚悟はいいな」
バキッ!
「ああっ!」
角材が、僕の背中を直撃しました。
ご主人様は、容赦なく僕の体を打ち据えます。
バキッ! バキッ! バキッ!
「あああっ! ぎゃーっ!」
僕は、痛みに喘ぎました。
木とは言え、鋭い角を持つ角材です。みるみる僕の皮膚は腫れ上がり、内出血の痕が浮き上がって来ました。
バキッ! バキッ! バキッ!
しばらくして、ご主人様は少し手を休め、ポケットから塩をひとつかみ取り出すと、床にまきました。
そして、
「仰向けになれ。腹を打ってやる」
そうおっしゃって、角材で僕の体を小突き、くるりと逆さまにしました。
「う、うあああっ」
床にまかれた塩が、背中の傷に染み込んできます。
かなり、皮膚が破れていたようでした。
しかし、苦しむ間もなく、角材が上から振り下ろされます。
ボグッ!
「おごぉぉっ!」
腹に一撃が加えられました。
内蔵が潰れるような痛みに、僕は吐き気を覚えました。
ドボッ! ボフッ! バキッ!
ご主人様は何度も、腹を角材で殴ってこられます。
僕はそのつど、顔を歪めて嗚咽を漏らすのです。
「さてと。次はどうしてほしい? 好きなことを言っていいんだぞ」
ご主人様は僕の体を蹴り、僕を俯せにします。
僕のしてほしいことを、わかっていらっしゃるのです。
「お、お願いです。それを、あそこに……」
「あそこじゃわからないな」
「こ、こ、…肛門に、差し込んで……ください……」
「ケツの穴だろ」
「ケ、ケツの穴です。お願いですから、入れてください!」
次の瞬間、角材がケツの穴にぶち込まれました。
ズボッ!
「はがああぁっ!!」
円柱のバイブレーターでさえ痛いのに、四角く尖った角材です。すぐに内部の皮膚が破れ、血が吹き出しました。
それでもご主人様は、お構いなしに角材を肛門に埋めてきます。
裂傷した箇所が更に擦られ、傷口が広がります。
「こうされたかったんだろ」
ご主人様は、笑いながら僕の尻を見下ろします。
「は、はい。もっと奥まで……お願いします」
「ケツの穴を角材でつっつかれて、満足か」
「はい! 満足です。ありがとうございます!」
「頭おかしいのか? これがイイなんてな」
ご主人様は、僕の顔に唾を吐きかけると、激しく角材を動かしました。
ズブッ! ズボッ、ズボッ、ズボーッ!
「あああああっ! ひいいっ、ぎゃー、ぎゃーっ!!!」
「そろそろやめてやろうか」
「や、やめないでくださいっ! もっと……」
「いいのか? 括約筋がボロボロになるぞ」
「構いません。どうか、ご主人様のお好きなように……」
「いい子だな。愛してるよ」
ご主人様は、少年のような表情で微笑まれると、角材をぐるぐると回し始めました。
「ぎゃあああぁっ!」
僕は悲鳴を上げました。
ご主人様が黙っていろとおっしゃらない限り、僕はありったけの大声で絶叫することにしています。そのほうが、ご主人様が喜ぶからです。
僕が苦しめば苦しむほど、ご主人様は笑ってくれるのです。
「嬉しいか?」
ご主人様が尋ねてこられます。嬉しくないわけなどありません。
「ああ、嬉しい! ご主人様ぁ!」
ドリルのように激しく回される角材。時折、深く貫かれたかと思うと、入り口近くまで抜かれます。その繰り返しのピストンが、たまらない恍惚を運んできます。
ご主人様は、僕を苦しませるだけでいいのに、そうやって僕に快楽を与えてくださるのです。
どろどろの血と腸液が角材にまとわりつき、もうあまり痛くなくなりました。
大便も、ぐちゃぐちゃに掻き回されて掘り返されてしまったようです。
その時、ご主人様は、僕の肛門に入りきらなかった角材を靴で踏みつけ、ボキッと途中で折りました。
「あうああっ!」
折れた衝撃で、体内に刺さった部分が激しく揺れ、腸を刺激しました。
腸壁が破れたような痛みがありました。
「よく見ろ。こんなふうに折れたぞ」
ご主人様が、僕の顔の前に角材を晒しました。
折れたところは、大きな棘のように尖っています。
角材の半分は僕の肛門に埋め込まれ、残り半分は、今、ご主人様の手にあります。
ご主人様は、いきなりそれを僕のペニスに突き落としました。
「ひぎゃあーっ!」
ズブッ、グチャッ、ズブッ、グチャッ……。
抜いては刺し、抜いては刺しを繰り返します。
ペニスは血まみれになって、潰れ、ひしゃげていきます。
僕の一番感じる亀頭も、雁の部分も、角材が突き刺さってめちゃめちゃになっていきます。
「嬉しいか?」
また、ご主人様が尋ねてこられます。
「は…はい…! う、れ、しいです……!」
ご主人様は、角材をいっそう高く持ち上げ、今度は僕の睾丸を狙い打ちしました。
グチャッ!
「あぎゃーっ! ぐああぁーっ!」
尖った角材は、見事に僕の睾丸に命中しました。潰れ、床の上に中身がはみ出ています。
このショックで死んでしまうかもしれないと聞かされていましたが、何とか意識は保っていました。きっと、ご主人様が手加減してくださったのでしょう。
しかし、それで終わりではありませんでした。
玉はもう一つ、残っています。
もう一方の玉は、いきなり潰されるのではありませんでした。
ゆっくりと、ゆっくりと……。
僕を焦らしながら、ご主人様は角材をじりじりと刺して来ます。
プチュッ。
一番尖ったところが、皮膚に刺さりました。血がピュッと出て、ご主人様の足元に飛びました。
「ひいい……」
徐々に力を込め、やがて……。
グチャ。
僕の睾丸は、二つとも潰されてしまいました。
僕は放心状態で、ご主人様を見つめていました。
「どうだ。完全に潰れた感想は?」
「幸せです、ご主人様。もっと……、もっとお好きなようになさってください……」
「クックック。それじゃ、仕上げだ。まだ神経が繋がっているうちに、あぶり焼きにしてやろう。タバスコをたっぷりかけて、お前が食うんだ。いいな?」
「ああっ、ご主人様……。ありがとうございます……」
とうとう、この時がやってきました。
僕は自分のペニスを目の前で焼かれ、スパッと切り落とされ、自分で食べなければいけないのです。
ご主人様が、ご自身の手で塩をふり、グチャグチャになった僕のペニスに揉み込んで下味をつけてくださいます。
「う、うう、うううっ」
その染みることといったら、この世の苦しみではありません。
でも、ご主人様の手の感触が嬉しいのです。僕がもっとも望んでいたことなのです。
今日、この日まで一ヶ月。順番に……。
足の指を十本、両足、手の指を十本、そして両腕。
すべて、自分で食べてきました。
だから、何も恐くありません。
だって、ご主人様が僕のために焼いてくれるのですから。
(了)